IIJ.news Vol.191 December 2025
ITスキルの向上と意識変革の両面からデジタル人材の育成を図る
株式会社琉球銀行
総合企画部 デジタル業務革新室
室長
長嶺 伸 氏
総合企画部 デジタル業務革新室
新城 航太 氏
[導入前の課題]デジタル人材育成には行員のITリテラシーの可視化が必要
――琉球銀行のDXへの取り組みについて教えてください。
長嶺:
銀行においてデジタル化やDXは不可欠です。当行では、デジタル化を通して行内業務の生産性を向上させるだけでなく、地域のお客さまのデジタル化をお手伝いする役割も担っていると考えています。地域の発展がないと、銀行も成長できないからです。
新城:
業務を変革していくには専門の組織が必要との考えから、2023年4月にデジタル業務革新室を設置しました。設置後に取り組んだ事例として、事務量が多い営業店では紙を使う業務もまだまだ残っているので、営業店の業務を変えていく必要性から、2025年7月に次世代CRM/SFAシステムを稼働させ、継続的な業務変革に取り組んでいます。
――デジタル業務革新室では、デジタル人材の育成にどのように着手しましたか?
長嶺:
まず、デジタル人材を定義しました。業務に用いるデジタルツールを使いこなせる「ベース人材」、システム導入やデータを利活用できる「本部企画人材」、取引先のデジタル化を支援する「事業者IT支援人材」、インフラ整備などに携わる「ITシステム専門人材」の4つです。そのうえで、それぞれのデジタル人材に適したスキルを身につけてもらう人材育成計画を立案しました。
――人材育成に関してどのような課題がありましたか?
長嶺:
まず琉球銀行のデジタル化の行程における「現在地」を確認する必要がありました。なかでも「ベース人材」は全行員が対象となりますので、全行員のITリテラシーを把握しなければなりません。そのため、人材アセスメントサービスを利用することにしました。そうしたサービスは数多くありますが、全行員が対象となるため、できるだけ受検負担が少ないことを条件にしました。
[選定の決め手]受検負担が軽く、マインド測定もできるIIJのソリューションを選定
――人材アセスメントサービスの選定は、どのように進めましたか?
長嶺:
20社ほど候補を挙げて、7~8社を本格的に検討しました。そのなかで「IIJ DX人材アセスメントソリューション」が我々の要件に合致しました。短い時間で済むことによる受検負担の軽さや、アセスメントで取得できる情報の種類、コストなどが、もっとも良いバランスで提供されていたのです。
新城:
営業店も受検するため、受検負担はかなり気にしていました。そこで、30分以内で受検できるサービスを探していたところ、IIJのアセスメントソリューションは全40問・約20分で受検が完了することがわかりました。
――DX人材アセスメントソリューションで、ほかに魅力的だったところは?
新城:
ITリテラシーの測定に加えて、イノベーター理論に則ったマインド測定ができる点です。イノベーター(革新者)、アーリーアダプター(初期採用者)、アーリーマジョリティ(前期追随者)、レイトマジョリティ(後期追随者)、ラガード(遅滞者)の5つに分類し、各行員のDXマインドを可視化できるので、課題の深掘りに有益でした。こうした診断結果をまとめたレポートをもとに会社全体の現状を可視化し、今後の方針を一緒に検討してくれる点も、たいへん心強かったです。
――アセスメントの実施はスムーズでしたか?
長嶺:
2024年8月に実施しました。目標回答率は9割以上で、最終的には97%から回答を得ることができました。現場から不満の声などは聞こえてこなかったので、負担も少なく実施できたと考えています。
[導入後の効果]アセスメントの結果をもとにITリテラシーとマインド変革を推進
――アセスメントを実施して、どのような課題が見えてきましたか?
長嶺:
結果は予想以上に厳しいものでした。ITリテラシーの点数は業界平均よりも低く、イノベーションマインドは約9割が「レイトマジョリティ」あるいは「ラガード」と診断され、かなり保守的でした。
新城:
アセスメント実施後、IIJからレポートをもらって独自の分析も進めました。営業店と本部のあいだに差があったりしたものの、全体的にITリテラシーの向上が望まれるという結論に至りました。
長嶺:
一方、興味深い結果もありました。数年前からITパスポート試験の資格取得を推進してきたのですが、合格者はITリテラシーだけでなく、マインドに関する点数も明らかに高かったのです。ITパスポートの資格取得はITリテラシー向上につながることが数値で示されたので、社内のニュース情報でもアセスメントの分析結果を示しながら、資格取得を奨励しています。
――ITパスポート以外にリテラシーやマインド向上の施策は実施していますか?
新城:
全体の平均点数が低く、基礎的なITリテラシーを強化すべきだということがわかったので、2025年度から毎月「デジ活」という内製テストを実施しています。Microsoft TeamsやOutlook、セキュリティなどテーマを決めて、10問を出題します。部店ごとに得点を集計して、1位~3位には賞金を出しています! こうした活動も盛り上げていきながら、行員の意識を高めていきたいです。
長嶺:
先に述べた「本部企画人材」についても、プロマネ力、データ活用力、デザイン思考力などを研修を通して養成していく考えです。さらに2025年9月には「データ活用研修」を行ない、データ活用の基礎を学んでもらいました。
新城:
データ活用研修を実施する際も複数社に話を聞きました。Pythonの活用といったレベル感ではなく、Excelなどのデータ活用を想定し、データ蓄積やデータクレンジングの重要性などの研修を考えていたところ、ここでもIIJによる研修の提案がマッチしていました。実施後のアンケートでは、有益度・理解度ともに高い数値が得られましたが、フリー回答欄では「少しむずかしかった」「わからない関数があった」といった感想も見られ、レベル設定の困難さを感じています。
[今後の取り組み]継続的なアセスメントとカルチャーの可視化でDX推進と意識変革を図る
――今後も効果測定などは継続的に実施しますか?
長嶺:
基本は年1回のアセスメントの実施を予定しています。効果測定のための継続性を考慮して、2025年もIIJのアセスメントを採用します。今回は、リテラシーとマインドに加えて、デジタルカルチャーについても測定できる「IIJデジタルカルチャー可視化ソリューション」を導入します。1年間の施策の効果を可視化すると同時に、デジタルカルチャーについても可視化して、発信方法の変革につなげていきたいです。
IIJデジタルカルチャー可視化ソリューションの提供イメージ

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――DXの方向性について、どのように考えていますか?
新城:
デジタル分野の進化は速いため、行員が意識的に情報収集に取り組み、マインドが変わることを期待しています。現状に満足せず、収集した情報を生かして、デジタル化がさらに加速することを期待しています。
長嶺:
アセスメントや研修などを重ねることでデジタル人材が増えていけば、各部署に配置することも可能になります。現場がデジタル化で効率化され、お客さま支援がいっそう充実するよう、リテラシーだけでなく、マインドやカルチャーの変革も進めていきたいです。IIJはコンサルティングにも取り組んでいるとのことなので、DX推進についても相談してみたいと思います。
本店:沖縄県那覇市東町2番1号
設立:1948年5月1日
資本金:569億6,700万円
従業員:1,417人(2025年3月31日)
米軍統治下の1948年5月1日、米国軍政府布令にもとづく特殊銀行として設立。八十二銀行を中心に銀行システムの共同化を進める「じゅうだん会」に所属し、2020年4月、千葉銀行を幹事行とする「TSUBASAアライアンス」に参加。中期経営計画「Value 2023」(2023年4月〜)において「地域経済の好循環サイクルを実現し、地域とともに成長する金融グループ」を長期ビジョンに掲げ、「事業基盤の拡大、ESG経営の実践、変革への挑戦」の3つの基本戦略を実践。質の高いコンサルティング、脱炭素化への活動、新ビジネス開発――これらを実行するための専門人材の育成などを通じた、持続的成長を目指している。

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本記事は2025年9月に取材した内容をもとに構成しています。記事内のデータや組織名・役職などは取材時のものです。