ページの先頭です


ページ内移動用のリンクです

  1. ホーム
  2. IIJについて
  3. 情報発信
  4. 広報誌(IIJ.news)
  5. IIJ.news Vol.191 December 2025
  6. 事例3  サンデン・リテールシステム株式会社

導入事例に学ぶDX 事例3  サンデン・リテールシステム株式会社

IIJ.news Vol.191 December 2025

AWSアカウントの乱立を接続点の再整理で改善。
オンプレミス環境からの移行とマルチクラウド運用を支援

サンデン・リテールシステム株式会社

常務執行役員 CTO&CIO
R&D本部・IT本部 本部長

大木 哲秀 氏

IT本部 情報システム部

志塚 俊樹 氏

[導入前の課題]分離・独立にともない自社ITシステムの整備が不可欠に

――御社の業務概要を教えてください。

大木:
サンデン・リテールシステムは、自動販売機、飲食店、コンビニエンスストアなどに向けた什器、冷蔵・冷凍関連製品のメーカです。従来はハードウェア(機材)をユーザに提供していましたが、ハードウェアの付加価値が下がるなか、サービスを活用したビジネスへのシフトを模索していました。そこで、元親会社のサンデン傘下の事業部門だった2017年、自動販売機や什器などからデータを集めるIoTの仕組みとして「RSクラウドサービス」をつくりました。この時は、サンデンが保有していたAWS環境上にサービスを実装しました。ただ、 RSクラウドを整えたものの、当時は扱えるデータがあまりない状況でした。

冷凍自動販売機「ど冷えもん」

――その後、体制に大きな変化があったと聞きました。

大木:
2019年、流通システム事業部門がサンデン・リテールシステムとして独立することになったのです。これにより、サンデンのオンプレミスサーバ上にあった業務システムを、自前の環境に移行する必要が生じました。基幹システムもサンデンからレンタルしていたので、早期に自社のサーバやネットワークを整備しなければなりませんでした。

――サーバの移行はどう進めましたか?

志塚:
オンプレミス時代の業務システムは、VMwareの仮想環境上に構築していました。これを自社環境に移設するための具体的な検討をコロナ禍の2020年頃から進めました。

大木哲秀氏

志塚俊樹氏

[IaaS基盤導入の決め手]オンプレミス環境からのスムーズなクラウド移行を実現

――VMware環境のクラウド化の方針と選定の決め手を教えてください。

志塚:
移行期限が限られていたため、構成を大きく見直す猶予がなく、現行環境を活かした移行が求められていました。そのため、オンプレミスのVMware環境からスムーズに移行できるIaaS(Infrastructure as a Service)基盤を探していたところ、 IIJが提供するIaaS「IIJ GIOインフラストラクチャーP2(以下、 IIJ GIO)」を見つけました。さっそくIIJの話を聞くと、VMware環境同士でオンプレミスからクラウドへ移行できるサービスであり、構成を変えずに短期間での移行が可能とのことだったので、導入を決定しました。

――IIJ GIOへの移行はスムーズでしたか?

志塚:
移行は2021年に行なわれましたが、 IIJは期限内の移行を完遂してくれました。 IIJにはその後もサーバ系の運用を委託し、基幹システムの約9割をIIJ GIOに移行できました。また、独立後のネットワークは、大手通信キャリアのIP-VPNサービスを利用したWANを構築していましたが、冗長性などの問題からネットワークも含めてIIJに一括して依頼することにしました。 IIJ GIOへの移行では、迅速かつ親身な対応を受けることができ、性能やコストに対する適切な提案もありました。

[マルチクラウド化の課題]複雑化したAWSへの接続環境を整理

――ネットワークリプレース後の状況について教えてください。

志塚:
WANをキャリア回線からIIJのSD-WANサービスに移行し、ネットワークを「IIJプライベートバックボーンサービス(プライベートバックボーン)」に集約して、 IIJ GIOと相互接続する環境を構築しました。サンデン時代にRSクラウドで使い始めたAWSは、必要に応じて利用が拡大していったことから、会計システムのほか、物流ハンディ管理、その他部門など、さまざまな業務システムで用いられ、提供元が複数ベンダに分かれている状況になっていました。

各導入サービスの利用イメージ


拡大する

――ネットワーク更新にともなうAWSへの接続形態の変更はありましたか?

志塚:
AWSは従来、旧ネットワークを提供していたキャリア網からDirect Connectによる閉域回線で接続していました。セキュリティ対策と通信品質の確保の両面から、Direct Connectが不可欠だったためです。今回のネットワークのリプレースにともない、 IIJプライベートバックボーンサービスからDirect ConnectでAWSに接続するかたちに移行する必要が生じました。

――IIJからはどのような提案がありましたか。

志塚:
これまでDirect ConnectのAWS側の収容先には、会計システムを実装しているAWSのアカウントを採用していました。会計システムのアカウントから他のシステムやさらに異なる事業者が提供するAWSにつなぐ形態でした。ただ、Direct ConnectについてIIJに調査してもらったところ、構成の複雑さからリスクがあるということだったので、新たにDirect Connectを収容するAWSアカウントを用意し、そのアカウントをハブにする接続形態を提案されました。構成をシンプルにしてリスクに備えることができるのでIIJの提案を採用し、AWS接続の切り替えを2025年3月に完了しました。

[導入後の効果]運用監視も委託し、マルチクラウド構成における統合運用管理を実現

――IIJのサービスを活用したマルチクラウド構成を採用したメリットは?

志塚:
約9割のサーバがIIJ GIOにあり、AWSへの接続もIIJのネットワークからDirect Connectで実現するかたちに整理できました。サーバ系だけでなく、ネットワークも含めて、マネージドサービスとして全体を管理してもらえるようになったので、運用の現場で考慮することが減り、業務がかなり楽になりました。 マルチクラウド体制をとりながら、IIJ GIOだけでなく、AWSもIIJに監視してもらい、アラートを上げたり調査してもらったりしています。IIJに一元管理してもらうことで、私たちの情報システム部の業務リソースを使うことなく、安定した運用を実現できています。IIJはマネージドサービス、サポート体制ともに強固だと感じています。

――今後についてお考えを聞かせてください。

大木:
今後は、運用管理業務をさらにクラウドベースのマネージドサービスに振り分け、情報システム部の業務を軽減して、本当に実現したい改革に力を注いでいける環境構築を目指しています。AWS上で稼働しているRSクラウドは、コロナ禍による食品流通のビジネスモデルの変化にともない、多くのIoTのデータを収集できるようになりました。クラウドを使ってデータを提供することが価値になる世の中を見据えて、その基盤となる業務システムをIIJ GIOで安定的に運用しながら、AWSで新しいビジネスモデルにも対応していくつもりです。事業を成長させるための攻めの一手としてIIJと今後もいい関係を築いていきたいです。

東京本社:東京都墨田区錦糸1-2-4アルカウェスト8F
設立:2019年7月29日
資本金:1億円
売上高:760億円(2024年度:連結)
従業員:約1,530人(2024年度:連結)

1943年に創業したサンデン株式会社の流通システム事業として「冷やす・あたためる」をコア技術に据えたビジネスをグローバルに展開。その後、サンデンホールディングスから分社化し、2019年にサンデン・リテールシステムとして独立。主な事業は、自動販売機や量販店・飲食店向け冷凍ショーケースを取り扱うコールドチェーン事業、コンビニエンスストア、ドラッグストア向けのリテールソリューション事業、フード機器事業、ロジスティック事業など。2021年には、業界初となる冷凍自動販売機「ど冷えもん」の提供を開始した。

導入したサービス・ソリューション

本記事は2025年5月に取材した内容をもとに構成しています。記事内のデータや組織名・役職などは取材時のものです。


ページの終わりです

ページの先頭へ戻る