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導入事例に学ぶDX 現場が直面するマルチクラウド活用における諸課題

IIJ.news Vol.191 December 2025

IIJはこれまで多くのクラウド導入・活用に携わるなかで、企業の現場で奔走している担当者(情報システム部門)が共通の課題を抱えている場面に遭遇してきた。
ここでは、そうしたマルチクラウド活用に関する“率直なお悩み”を紹介する。

株式会社インターネットイニシアティブ

IIJ マーケティング統括本部 サービスプロダクト推進本部 副本部長

井ノ川 俊次

人材不足に揺れる現場

企業のDX推進の中核をなすのが“事業部門におけるマルチクラウド活用”であり、その指針となるのが、クラウド導入を体系的に整理したフレームワーク「CAF(Cloud Adoption Framework)」です。

CAFには、人材・運用・ガバナンス・セキュリティなど複数の観点が含まれていますが、自社のIT環境に対して、これら全ての要素を一度に満たす必要はありません。CAFを念頭に置きつつ、現状に応じて優先度をつけて段階的に取り組むことで、現実的かつ持続的な進化が可能になります。

しかし多くの企業では、実際の進捗状況と理想の進め方とのあいだのギャップに直面しています。情報システム部門は、複数の業務を抱えてリソースが逼迫しているうえに、事業部門から求められるシステム実装のスピード感と自社の情報資産を守るガバナンスのあいだで板挟みになっているのです。

Case 1: 課題整理が追いつかず、孤立化

DXやIT改革が進まない大きな要因として、そもそも「何から手をつけるべきかわからない」ことが挙げられます。汎用的な情報や成功事例は多く存在しますが、お客さま固有の環境に最適化された情報はほとんどありません。外部パートナーに相談しても、製品の売り込みが優先され、中立的な立場から提案してくれることはまれです。この問題は人材不足によってさらに深刻化します。十分な人員がいないため、課題の整理やプライオリティの判断に時間を割けず、日々の運用対応に追われた結果、DX推進は「理想はわかるが手が回らないため後回し」という状況に陥ります。

IIJでは、このような「何から手をつけたらいいのかわからない」「何をどこまで導入したらいいのか不安」といったお悩みに対して、お客さまと一緒に課題を整理し、解決策を探る「IIJ Sketch & Draw Workshop」を開催しています。本特集の事例1には、このワークショップに参加したお客さまのインタビュー記事を掲載しています。

Case 2: ガイドラインの不在と管理外クラウドの増加

多くの企業で見られるのが、クラウド活用における社内ガイドラインの不在です。事業部門は「AWSでこのシステムを立ち上げたい」「クラウド環境で実験的にサービスを試したい」と考えても、基本的に事業部門はクラウド利用時のセキュリティ設定ルールを持ち合わせていません。情報システム部門に相談しても明確な回答をもらえず、「自部門の責任で対応」となってしまうケースも散見され、結果的に管理外のクラウドサービス利用が増えます。管理外のサービスは、利用者の裁量で構築されるため、セキュリティ設定が統一されず、運用・監視コストが膨らみます。また、管理対象に入れたとしても、対象となるクラウドサービスが多岐にわたるので、情報システム部門は日々の対応に追われ、利用ガイドラインの策定や情報収集に十分な時間を割けません。

こうした課題を支援するためにIIJでは、クラウド利用のルールが整備されていないお客さま向けにクラウド活用ガイドラインの作成支援などを行なっています。

Case 3: 散在したデータの整備不足

DX成功のカギの1つはデータ整備とその活用です。しかし、社内には“そのままでは使えない、扱いにくいデータ”が各部門に散在しており、実際に活用するにはそれらを集約して整える必要がありますが、多くの企業にとって容易なことではありません。事業部門がデータ分析を行ないたいと考えても、異なるシステム・クラウドから収集したデータを分析に適したかたちに整理する作業に時間をとられ、企画などの本来やりたい業務に十分なリソースを割けないという問題が発生します。このような状態が続くと、事業部門の担当者がExcelを手作業で加工するといった運用が常態化し、IT部門には「このデータをこう加工・出力してほしい」といった業務支援・作業代行の依頼が集中します。そもそもデータ整備には専任者が必要ですが、複数業務の兼務や人材不足ゆえに、十分な対応ができない状態が頻発しています。データが整わなければ、DXのゴールを描いても前に進めず、現場のフラストレーションは溜まるばかり……。データ整備は単なる技術的課題ではなく、人材不足による運用負荷とも切り離せない関係にあるのです。

IIJは、このような課題に対して、複数のシステムやクラウド間のデータをスムーズに連携できるIIJクラウドデータプラットフォームサービスを提供しており、本特集の事例4に導入事例を掲載しています。

Case 4: ID管理と運用負荷

マルチクラウド活用にともない、従業員のアカウントやID管理、認証・認可の設定作業がIT部門の大きな負担となっています。SaaSを増やすたびに誰がどの権限を持つのか管理する必要が生じ、組織内の人材流動にも対応しなければなりません。多くの企業では、新卒採用や組織改編などの業務が特定時期に集中したり、入社・異動・退職のたびにアカウントを作成・削除し、権限を調整する作業が発生します。また、SaaSの利用が拡大する一方、事業部門から「早く使いたい」という声が届くと、情報システム部門は間違えられない権限付与の作業に慎重かつ短期間で対応しなければなりません。こうした状態が続くと、情報システム部門の担当者は疲弊し、ID管理のミスや手戻りも増えがちです。その結果、運用負荷やセキュリティリスクが高まり、さらに人材不足が問題解決を遅らせる悪循環に陥ります。

IIJはこのような悩みをもつお客さまに、ID管理、認証・認可に対応するサービスを提供しており、本特集の事例6にID認証に関する導入事例を掲載しています。


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